ながくなるかも。
2002年3月7日ノゾミちゃんとは会えなかった。『体調が悪い』っていうメールが来たからだ。
→どうしたの?大丈夫?
←うん、ごめん。
→電話するよ。
4回めのコールで出てくれた。
「今ハナかんでたの」
笑う声がかわいい。そっか、春かとおもったら急に寒くなるからね、カゼとか気をつけないと。
「ありがと」
家には帰ったの?
「うん、あぁ、うん・・・」
ノゾミちゃんには去年の11月から付き合いはじめた彼氏とそのほかに好きな男の子がいる。彼氏の部屋には、ゆうべで、三日目のお泊りだ。
まだ彼氏のとこなんだ。
「・・・うん」
一緒にくらしてるの?
「うん・・・」
この前送ってたとこ?
「ううん、あそこに部屋はあるの」
そっか。決して望ましい状況ではないけれど、これまでの経験上、ここでいちいちダメージをうけていては一歩も前に進めなくなってしまうことを、ぼくは知っている。
ハタチの体力がもう自分にはないことをぼくの脳みそは知っていて、ダメージを勝手にやわらげてくれる。さすが、長いつきあい。
はやく、治すんだよ。
「ありがと。でも私たち、もう・・・」
ノゾミちゃんがいいかけた。ちょっと黙る。
もう・・・のあとに続く言葉で、前向きなものなんてないこともよく知っている。
どうして? 聞いたぼくにノゾミちゃんの声がかぶった。
「会わないほうがいいよ」
・・・・・・
「彼氏ともちゃんとしたいし・・・ごめん」
ぼくはたぶん、君のそういうところが好きなんだとおもう。うまくいえないけど、にじみ出ている大らかな優しさ。本当にこのまま会えなくなってしまうような気がした。なにかいわなくっちゃ。
でも、ぼくら、悪いことしてるわけじゃないよ。
今のところは。ぼくがノゾミちゃんに会ったのは、仕事先。必要以上にたくさん話しかけて、メールを送るようになった。3本に2本の返事が返ってくるようになったときに食事に誘った。それが一週間前だった。
楽しくお話して(彼女もホントに楽しそうに笑っていた)、おいしいご飯を食べて(おいしそうに食べて、くしゃっと笑った。ぼくはそれだけでとても嬉しかった)、ぼくが選んだお酒を飲んで、おいしいけど、オトナのお酒っぽいねっていいながらも一杯飲んで、そのあとはジンジャーエールにしたあと、お腹もいっぱいになって、電車もおわっていたからタクシーで送っていっただけだ。
年が少しはなれているのに、ぼくたちは楽しくお話して、むじゃきながらにもノゾミちゃんの頭の回転の速さに感心させられたりもした。
「彼氏がいろいろ干渉してくるひとで、ちょっとうっとうしいこともあるの」
そんな話題になったときには必要以上にドキドキしたりもした。
もっと会って、もっと仲良くなりたいとおもった。単純だが、一緒にいるだけで、とても楽しいんだ。
自分の一目ぼれ体質はもう変わらないんだろうな。まあ、話をもどす。
「それはそうだけど・・・」
オレ、ノゾミちゃんのこと好きだし、こんなんで会えなくなるなんて嫌だよ。
「だったら、余計、会えない・・・」
とぎれとぎれだけど、早口にしゃべるノゾミちゃん。ツラクさせてるのがぼくだとおもうと、胸が痛む。本当だ。でも、終わりたくないよ。
会ったばっかりだし、もっと普通にごはんとかしようよ、無理なことはいわないよ。
「・・・ごめん、電池が切れそう。さっきからピーピーいってるの」
え?
「切れちゃいそ・・」
ノゾミちゃんの電話が息絶えた。
表に出て話していた。駐車場に吹き付ける風は冷たかったけれど、そのままタバコに火をつけた。ちょっとだけ冷静に考えることができるような気がしたけれど、できなかった。
フィルターが焦げそうなところまで吸って、もう一度電話をかけてみた。
我ながら女々しい行動だとはおもう。
当然のように電話会社のアナウンスが流れて、なぜか少し安心した。
メールを送っておこう。
これで最後にしたくない、という希望。
またメールからでも、という交渉。
そして若干の哀れみを誘うかとおもわれる言葉。こすっからいテクニックかともおもうけれど、ぼくが勝てる方法はいまのところそれしか思えなかった。
ノゾミちゃんはいつメールを読んでくれるだろうか。それとも本当にこれで終わっちゃうんだろうか。
ぼくからもう一度、メールする。どんなんでもいいから返事をちょうだい、そうお願いして送信した。
2本目のタバコはとてもまずくて、すぐに消した。
仕事場にもどらなくっちゃ。
→どうしたの?大丈夫?
←うん、ごめん。
→電話するよ。
4回めのコールで出てくれた。
「今ハナかんでたの」
笑う声がかわいい。そっか、春かとおもったら急に寒くなるからね、カゼとか気をつけないと。
「ありがと」
家には帰ったの?
「うん、あぁ、うん・・・」
ノゾミちゃんには去年の11月から付き合いはじめた彼氏とそのほかに好きな男の子がいる。彼氏の部屋には、ゆうべで、三日目のお泊りだ。
まだ彼氏のとこなんだ。
「・・・うん」
一緒にくらしてるの?
「うん・・・」
この前送ってたとこ?
「ううん、あそこに部屋はあるの」
そっか。決して望ましい状況ではないけれど、これまでの経験上、ここでいちいちダメージをうけていては一歩も前に進めなくなってしまうことを、ぼくは知っている。
ハタチの体力がもう自分にはないことをぼくの脳みそは知っていて、ダメージを勝手にやわらげてくれる。さすが、長いつきあい。
はやく、治すんだよ。
「ありがと。でも私たち、もう・・・」
ノゾミちゃんがいいかけた。ちょっと黙る。
もう・・・のあとに続く言葉で、前向きなものなんてないこともよく知っている。
どうして? 聞いたぼくにノゾミちゃんの声がかぶった。
「会わないほうがいいよ」
・・・・・・
「彼氏ともちゃんとしたいし・・・ごめん」
ぼくはたぶん、君のそういうところが好きなんだとおもう。うまくいえないけど、にじみ出ている大らかな優しさ。本当にこのまま会えなくなってしまうような気がした。なにかいわなくっちゃ。
でも、ぼくら、悪いことしてるわけじゃないよ。
今のところは。ぼくがノゾミちゃんに会ったのは、仕事先。必要以上にたくさん話しかけて、メールを送るようになった。3本に2本の返事が返ってくるようになったときに食事に誘った。それが一週間前だった。
楽しくお話して(彼女もホントに楽しそうに笑っていた)、おいしいご飯を食べて(おいしそうに食べて、くしゃっと笑った。ぼくはそれだけでとても嬉しかった)、ぼくが選んだお酒を飲んで、おいしいけど、オトナのお酒っぽいねっていいながらも一杯飲んで、そのあとはジンジャーエールにしたあと、お腹もいっぱいになって、電車もおわっていたからタクシーで送っていっただけだ。
年が少しはなれているのに、ぼくたちは楽しくお話して、むじゃきながらにもノゾミちゃんの頭の回転の速さに感心させられたりもした。
「彼氏がいろいろ干渉してくるひとで、ちょっとうっとうしいこともあるの」
そんな話題になったときには必要以上にドキドキしたりもした。
もっと会って、もっと仲良くなりたいとおもった。単純だが、一緒にいるだけで、とても楽しいんだ。
自分の一目ぼれ体質はもう変わらないんだろうな。まあ、話をもどす。
「それはそうだけど・・・」
オレ、ノゾミちゃんのこと好きだし、こんなんで会えなくなるなんて嫌だよ。
「だったら、余計、会えない・・・」
とぎれとぎれだけど、早口にしゃべるノゾミちゃん。ツラクさせてるのがぼくだとおもうと、胸が痛む。本当だ。でも、終わりたくないよ。
会ったばっかりだし、もっと普通にごはんとかしようよ、無理なことはいわないよ。
「・・・ごめん、電池が切れそう。さっきからピーピーいってるの」
え?
「切れちゃいそ・・」
ノゾミちゃんの電話が息絶えた。
表に出て話していた。駐車場に吹き付ける風は冷たかったけれど、そのままタバコに火をつけた。ちょっとだけ冷静に考えることができるような気がしたけれど、できなかった。
フィルターが焦げそうなところまで吸って、もう一度電話をかけてみた。
我ながら女々しい行動だとはおもう。
当然のように電話会社のアナウンスが流れて、なぜか少し安心した。
メールを送っておこう。
これで最後にしたくない、という希望。
またメールからでも、という交渉。
そして若干の哀れみを誘うかとおもわれる言葉。こすっからいテクニックかともおもうけれど、ぼくが勝てる方法はいまのところそれしか思えなかった。
ノゾミちゃんはいつメールを読んでくれるだろうか。それとも本当にこれで終わっちゃうんだろうか。
ぼくからもう一度、メールする。どんなんでもいいから返事をちょうだい、そうお願いして送信した。
2本目のタバコはとてもまずくて、すぐに消した。
仕事場にもどらなくっちゃ。
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